「疲れないバタフライ」は「疲れるバタフライ」の先にありました
「バタフライは疲れる」そう感じておられる方は多いです。
今回は「疲れないバタフライ」の泳ぎ方を探ってみます。
1.疲れるバタフライ
バタフライを泳がれてる方を見ていると、泳いだ後「とてもしんどそうな表情」「ちょっとしんどそうな表情」「涼しい顔でやせ我慢してるけど、明らかにホントはしんどいって思ってる表情」の3つを合計すると、バタフライを泳がれている全体の8割以上、ひょっとした9割の人が「バタフライで疲れている」というのが分かります。
しかし更に観察すると、その中で大きく2つに分ける事が出来ます。
1つは「バタフライを泳いで疲れている」という方。
もう一つは「疲れるバタフライを泳いでいる」という方です。
自分の水泳教室の生徒さんならすぐお声掛けしますが、それ以外の方となるとそうそう声は掛けられませんのでずーっと見てるだけになるのですが「あの泳ぎ方じゃ、誰が泳いでもしんどいだろうな」と、ちょっと気の毒になるような泳ぎ方をされる方もしばしばお見受けします。
では「疲れるバタフライ」から「疲れないバタフライ」を考えてみることにしましょう。
2.疲れないバタフライに変える方法
要は疲れないバタフライをすれば疲れないのであって、理論的には疲れる原因を疲れない要因に置換すればいいだけの話です。
と口で言うほど簡単じゃないのが水泳の世界であり、上達への登り坂となります。
これから記載する事が、その上達への登り坂を少しでもなだらかな坂に変えるきっかけになればとても嬉しいです。
1.「疲れる原因」と「疲れない要因」① タイミング
それぞれのパーツがきれいに出来ていてもタイミングがずれてしまっていては疲れないものも疲れてしまします。
タイミングのずれが生じる箇所は人によって違ってきますし、泳がれている本人も「ちょっと変かな?」と自分でも薄々感じてはいるものの具体的にどこが原因でタイミングがずれているかまでは分からないのが普通です。
なのでタイミングのずれに関してはここではとりあげず、とりあえずの解決に向けての練習方法だけ記載します。
手が前に伸びた時に1回キックして、手がきおつけになった時に1回キックします。
それが出来るようになったら前と後ろに手が来た時それぞれキックを2日回ずつ。
更に前で3回後ろで1回、その次に前で1回後ろで3回と回数を変えていきます。
その間はもちろんノーブレスで行って下さい。
キックはいつも通りに、そして手がどの場所の時も同じ強さで強くキックしましょう。
手はかくというより単に動かすというイメージで大丈夫ですので、タイミングに間に合うように動かして下さい。
この練習をすると、手足のタイミングだけじゃなく体の持っていき方のイメージもつかみ易くなると思います。
2.「疲れる原因」と「疲れない要因」② 手と足だけで泳ごうとする
疲れる大きな原因として「手と足だけで泳いでいる」というのがあります。
つまり体を使えていないバタフライなので、筋力のある男性ならまだしも、女性ではとてもじゃないけどすごく疲れる泳ぎ方になってしまいます。
うねりとはまた違う感覚なので、うねりとは別物とお考え下さい。
動きの要点としては「大きい支点から小さいものを動かす」のではなく「小さい支点から大きなものを動かす」という事になります。
普段の生活で手足を動かす時は、胴体は動かさないようにします。
「テーブルの上のコップを取る時は手だけが動いてる」という事と同じ事です。
疲れないバタフライを作るのに必要なのはその逆の感覚。
ボートを漕ぐイメージをして下さい。
左右の手に1本ずつオールを持っていて、そのオールを使って漕ぐ訳ですが、実際に漕いでるイメージをしたら漕ぐ時は体が前後に動くはずです。
それをそのままバタフライに当てはめて、「手が前から後ろに行っている」のではなく「体が後ろから前に移動している」と考えたらどうでしょう。
これがいわゆるく「小さい支点から大きなものを動かす」という事です。
練習方法としては普段やっているノーブレバタフライで十分なのですが「体の方が後ろから前に動いているんだ」という意識をしっかり持って練習する事がポイントです。
これはバタフライだけでなく水泳のどの種目においても使える感覚なので、また他の種目でも試してみて下さい。
3.「疲れる原因」と「疲れない要因」③ 重心移動をしない
いわゆる立位に近い状態で泳いでるという事になりますが、バタフライで立位の状態になってしまう原因もたくさんあります。
なのでその原因は置いといて、重心を前に移動し易い方法をご紹介します。
重心を前に持ってくる方法としては頭部を下げる=頭を突っ込む方法がよく用いられますが、恐らくそれは既に実施されていると思われます。
やっているのにも関わらずまだ重心が後ろに残ってるから立ってしまいます。
なのでその動きに少し加勢してあげて重心を前にもってき易くしてあげましょう。
イメージして下さい。
左手にコップになみなみと注がれたビールを持っています。
そのまま右手で冷蔵庫のドアを開け、お皿に乗ったチョコボールのおつまみを取りだしました。
左手にビール、右手にチョコボールと両手は塞がってますが、冷蔵庫のドアをどうにかして閉めないといけません。
足で閉めるのはちょっとお行儀が悪いのでお尻で閉める事にしました。
冷蔵庫のドアと反対向きに立ち、お尻で閉めようとした時、どのように閉めますか?
そのままドアにもたれかかっては上半身が動いてしまいますのでビールやチョコボールはこぼれてしまいます。
これらをこぼさずにお尻でドアを閉めようとすると、上半身を動かさないようにしてお尻だけを少し突き出すようにするはずです。
あまり強い力でお尻を突き出すと冷蔵庫のドアポケットに入れてあるビンなどが壊れてしまうかもしれないし、弱い力だとドアが閉まらない。
この絶妙な力の入れ具合とお尻を突き出す感じを、バタフライの頭を突っ込む時と同時に行って頂くと、頭を一生懸命突っ込んでる割には、重心が前に移動してきた感じがないという時に、その頭での重心移動に加勢されるような感じになり、少しその重心移動の感覚がつかみ易くなるかと思います。
練習方法はやはり同じくノーブレバタフライで十分です。
3.上手の坂のひと登り
疲れないバタフライの方法を色々記載させて頂きましたが、これらは今まで私が自分でやってみてまあまあ感覚がつかみ易い方法だったので、実際の水泳教室でも実施していた練習方法です。
具体的な練習方法はどれもノーブレバタフライなのでやる事はとても簡単です。
全員がこのやり方で上手くなった訳ではありませんが、中には「何となくわかった気がする」と出来る出来ないは関わらず、とりあえずバタフライの上達に向けて、再度意欲を出して練習して下さった方はたくさんおられましたので、ぜひ「自分は疲れるバタフライを泳いでるかも」と心当たりがある方は、暇な時にでも試してみて下さい。
少しうろ覚えなのですが、落語の世界に「名人は 上手の坂の ひと登り」という格言があると昔聞いた事があります。
「上手だね」というのは誰でも言ってもらえるので、その先の名人になりたければその上手の先に行かなければならない、みたいな内容だったと思います。
今まで水泳上達のために色々努力と苦労を重ねてきて、人からも「上手」と言われるようになった今だからこそ、目の前の「疲れるバタフライ」の坂を登りきって「疲れないバタフライ」手に入れ、ぜひ名人の域を目指して頂ければと思います。
[bata]