クロールを泳ぐ時の首の使い方
大半の方は「クロールの息継ぎは?」の問いに対し「首を横に向けて行う」と答えます。
はたしてそうでしょうか?今回は、クロールと首の関係性について考えます。
1.人と魚の違い
「人と魚の違いは何でしょう?」の問いに対し、まず挙がってくる回答は「水中で呼吸するためのエラがあるかないか」ということです。
次に「泳ぐ」というキーワードを設定し「泳ぐことに関して人と魚の違いは?」と問うと、魚には「ひれがある」「鱗がある」など魚の特徴が多々挙がり、それらのすべてはもちろん正解ですが、最も大きな違いとして挙げられるものの一つに「首があるかないか」ということがあります。
水中に生活拠点を持つ魚は、泳ぐことが生きることそのもの。
あらゆる生き物の中で最も泳ぐことに特化した生物ということになります。
故に進化の過程で、泳ぐことに必要なものは追加され、不要な物は排除された。
つまり水中で呼吸するために必要なエラは追加され、不要な首は排除されたものと思われます。
魚には首が無くて人間には首がある。
人が魚に憧れ、水泳が上達するようになるまでの試練の中の一つにあるこの「首の有無」が非常に重要なポイントとなります。
次の章ではこの「首」の使い方を考えてみましょう。
2.クロールの息継ぎは首が横向き?
冒頭にも記述しましたが、「クロールの息継ぎは?」の一般的な答えは「首を横向きにして」が普通です。
そしてその答えは決して間違ってはいませんが、パーフェクトという訳でもありません。
首はもちろん使いますが、同時に腰も使うし、肩も使います。
つまりクロールの息継ぎは体全体を使って行います。
しかし対象者の泳力によって、首や体の使い方は微妙に変化してきます。
では具体的にどのように使うのかをご紹介します。
1.初心者のクロールにおける首の使い方
初心者がクロールを習得する際、断トツに難しい項目が息継ぎです。
水泳の経験がまったくない人でも、バタ足も腕の回し方もそれっぽく出来なくはないけど、息継ぎだけはそれっぽくどころかこれっぽっちもできない、という方がほとんどです。
クロールの息継ぎの難しさはその姿勢にあります。
難しい、でもどうにかして息継ぎをしたい、という思いで自然に動いてしまうのが首です。
しかし水泳初心者がクロールで首を動かして息継ぎをする場合、顔の向きは前、もしくは斜め前になります。
今ひとつ格好が悪い、だけで話が済めばいいのですが、首を横に捻って、尚且つその状態で水面上に顔を上げるために無理に首を持ち上げるこの姿勢は身体的に非常に良くなく、首を痛める原因になりかねないことなります。
クロールの練習を始めたばかりの時点から気を付けておきたいポイントは、息継ぎの時に首を起こさないことです。
初心者の、クロールの息継ぎ練習でお勧めしたい方法としては、息継ぎの時、完全に仰向けになってしまうことです。
完全に仰向けになることで首を無理な方向に動かすことはなく、結果、首を捻って痛めてしまうという事もありません。
ついでに息継ぎそのものも楽に出来るようになりますので、首に余計な力が入りにくくもなります。
水泳を覚え始めの方には特にお勧めしたい方法です。
初心者のクロールにおける首の使い方は「首は起こさない」がポイントです。
2.少し泳げるようになってきた方のクロールにおける首の使い方
この段階になるとだいぶ慣れてきているので油断しがちになり、そうするとすぐ首を捻ってしまいがちです。
間違えてはいけないのは、首を動かすのは結構ですが決して捻ってはいけないというところです。
具体的に気を付けるポイントとしては、息継ぎの際、真横より前方に顔が向かないようにすること。
つまり息継ぎをした時、斜め前を含めた前方の景色が見えてなければ大体大丈夫です。
その点に気をつけて頂くと、首を痛めないことに加え、水泳全般の上達にもつながります。
少し泳げるようになってきた方のクロールにおける首の使い方のポイントは「息継ぎの時、真横より前を見ないようにする」ということです。
3.魚にはない首だからこそ
今回はクロール限定で首の使い方とその注意点について考えてみました。
クロールという泳ぎに際しては、首の動かし方はとても重要です。
しかし正しく動かせば何も問題はありませんので、ポイントをしっかり押さえた上で練習なさってみて下さい。
人は泳ぐことで魚にはかないません。
水泳の世界チャンピオンでもメダカに負けてしまうでしょう。
しかし、魚は泳ぐことはできても、クロールも背泳ぎも平泳ぎもバタフライもできません。
出来るのは手や足や首を持ってる人間だけ。
せっかく神様から貰った首なので、しっかり活用して水泳全般の上達を目指しましょう。
うまく使えればネックだった事が減るかもしれませんね。