平泳ぎのけのび~カエルのように滑るように
平泳ぎはけのびで伸びる事が非常に重要視される泳法です。
今回は水泳の基礎とも言えるけのびとその練習方法をいくつかご紹介したいと思います。
1.けのびの姿勢
近代4泳法の中で平泳ぎという泳ぎ方は、同じ水泳でも特にけのびで伸びる事が重要視される泳ぎ方です。
伸びている間のけのびの姿勢でタイムも大きく変わってきます。
これは上司に教えてもらったことなのですが、北島康介さんがオリンピックで200Mの平泳ぎで金メダルを取られた時、他の人の泳ぎと具体的に何が違うのかと聞いたところ「姿勢だ」と教えてもらいました。
北島選手は100Mより200Mが得意、つまりターンの回数が多い種目の方が得意という事です。
それは映像を見ながら教えてもらったのですが「北島選手はターンの後で浮き上がる度に他の選手より頭一つ前に出ている」というもの。
見ると確かにそうでした。
つまりけのびの姿勢が非常にいいので、ターンで壁を蹴った力を最大限推進力に変える事が出来ているという事でした。
もちろん平泳ぎを泳いでいる時もそのけのびの姿勢で伸びる訳ですから、必然的に他の選手より伸びる距離が増える、という事なんだそうです。
それを教えてもらって、平泳ぎの時のけのびの姿勢がいかに大事かという事を学びました。
2.平泳ぎのけのびの役割
その事から考えると、平泳ぎという泳ぎ方はけのびとけのびの合間に手をかき、キックをしているという事になると思います。
確かに自転車でいくらペダルを漕いでも、ブレーキを握りしめたままでは前に進む訳がありません。
プルやキックで作った力をいかに推進力に変えるかは、けのびで伸びている時に、いかにブレーキを掛けないか、という事になると思います。
そこで、北島選手のようなきれいなけのびの姿勢は作れないにしても、少しでもそれをイメージし、少しでも伸びが取れるような練習のポイントをご紹介したいと思います。
3.けのびで伸びる
平泳ぎは一般的にクロールと背泳ぎ習得後に覚える泳法なので、ある程度は水泳が上達している人が取り組む泳法です。
という事は、それまでそこそこ水泳に関して苦労してきた人が習う泳ぎなので、けのびもそれまでに何百回とされて来てると思います。
なので、同じけのびでもちょっと場所や形をを変えると、また違った感覚が得られ、新しい発見につながると思いますので、その方法をご紹介します。
1.けのびの練習① 仰向け
平泳ぎはうつ伏せの競技なのでうつ伏せの状態はたくさんしてこられたと思いますが、それを仰向けにすることにより感覚がかなり変わってくると思います。
やり方はただ仰向けになってけのびするだけです。
ただしスタートからけのびで伸びている最中、ずっと顔に水が掛からないようにして下さい。
顔に水が掛からないようにするのが目的ではなく、けのびの練習をすることが目的ですので、壁をそーっと蹴るという方法ではありません。
あくまでもけのびの練習ですので、壁はしっかりと蹴って下さい。
仰向けはちょっと顎を上げ過ぎてもすぐ顔に水が掛かるので、自分では引いていたつもりの顎も、ひょっとしたら結構上がっているかもしれませんよ。
2.けのびの練習② 横向き
これはなかなか難しいので、鼻に水が入る人はノーズクリップを使用して下さい。
ただ横向きになり、いつも通りにけのびをするだけですが、チェックするポイントはもちろん真っ直ぐ進むかどうか。
体は正直なので、ちょっと体が反ってたり、反ってなくても手首が固定されていなかったりすると、すぐ右や左に曲がっていきます。
体が横向きという事は、足にも力を入れて伸ばしておかないと、下側になっている足はすぐに下に引っ張られてしまいます。
けのびの姿勢は頭や腰の位置が重要視されがちですが、指先から爪先までがけのびの姿勢を作っています。
姿勢は気をつけているのにどうも距離が伸びないという方は、ひょっとしたら手首が反ってたり、爪先が離れているのかもしれません。
3.けのびの練習③ 潜水
これは①必ず誰かに見ててもらいながら行う ②水深が1.5Mまでのプールで行う という条件のもとで行って下さい。
いつも通りにけのびをします。
それを潜水で行うだけです。
できれば床すれすれのところで行ってみましょう。
床が目の前を結構な速さで通り過ぎていくのを目で確認しつつ、その時、少しだけ時々足の親指で床を触ります。
これはけのびで伸びる感覚を掴む練習というより、自分の体の位置を確認する練習です。
潜水のけのびの練習でよくあるパターンは頭は比較的床に近いけど、足は限りなく水面に近いというパターン。
顔がある程度潜っていたら、首から下も真っ直ぐなっていると勘違いし易いです。
そこで時々足の親指で床を触り足の位置を確認し、頭は床を目で確認することで、自分の水平状態が確認し易くなってきます。
普段のけのびでなかなか伸びない原因の一つは、頭を入れ過ぎているというものもありますので、これで自分の体の位置を確認してみるのも面白いです。
ただしくれぐれも先の条件下のもとで行うようにして下さい。
4.必要以上に余計な事をしない
平泳ぎをもっと勉強したくて、指導員になりたての頃、カエルを捕まえて泳ぐ姿を観察した事があります。
カエルは足だけで泳ぎます。
手はダラっとした感じでゆるい「きをつけ」状態です。
顔は鼻から上を水面上に出したままになっています。
そしてキックは1回蹴ったら比較的じっとしたままで、スピードがなくなり完全に止まる寸前、もしくは止まってから再度キックを入れてまた伸びての繰り返しでした。
そこには平泳ぎが上達するために必要な要素がたくさんあると、私は感じました。
その中で一番参考になった事は、とにかくカエルは、必要以上に余計な事はしない、少なくとものびている間はじっとしたままだという事でした。
もちろんカエルが泳ぐのと平泳ぎを泳ぐのとでは全く内容が違いますが、それでもカエルが泳いでいる姿を見てると、何だかとても嬉しくなりました。
今でも私の平泳ぎの師はあの時のカエルです。
いつかあの時のカエルのように涼しい顔で滑るようなけのびの平泳ぎが泳げるようになりたいものです。
[hira]