クロールの「肘から抜く」を日本泳法から学ぶ
クロールのリカバリー動作に肘から抜くような方法があります。
今回はその簡単な練習方法をご紹介します。
1.抜き手
水泳教室でクロールのリカバリー動作の肘から抜くような内容を伝えた時、ご年配の方から「子供の頃にやってた“抜き手”ってやつだね」とよく言われます。
抜き手と聞いただけで何となく想像はついたのですが、調べてみると列記とした日本泳法の一種で、古来から行われていた方法みたいでした。
確かに競泳の肘から抜くというやり方と日本泳法の抜き手とは、厳密に言えば違うのかもしれませんが、大まかに言うとまあまあそんな感じである事には違いないと思いますので、抜き手でピンと来る方はそちらからイメージして頂いて大丈夫だと思います。
2.クロールの「肘から抜く」とは?
クロールで肘から抜くという場面は、リカバリー動作のハイエルボーと言われる動作を行う時の場面を指します。
初心者では必要ありませんが、水泳が上達するにつれ、ほとんどの方がこのハイエルボーでリカバリー動作を行います。
理由としてはクロールの軸のブレを押さえられたり、素早く腕を元の位置に戻せたりするというものが主に挙げられますが、何より見た目がいかにも上手っぽく見えるのでとても人気のあるリカバリー方法です。
「肘から抜くように」とか「肘を釣ってくるような感じで」というセリフをクロールのレッスンの時に耳にされた方も多いはず。
しかし感覚が分からない人にとっては何をどう動かせばいいか分からないのも現状です。
そこで「肘から抜く」のではなく「肘から抜かざるを得ない」状況を作り出し、自然に肘から抜けるようにするのが簡単な方法です。
その簡単な方法とは・・・
3.やっぱり抜き手
厳密に言えば「肘から抜く」と「抜き手」は違いますが、放っておいても勝手に肘から抜けるようになる手っ取り早い方法は、やっぱり抜き手です。
方法は、顔を上げてクロールを泳ぎます。
その時のキックは平泳ぎのキックを使います。
クロールのリカバリー動作における肘を抜くという部分だけの練習なので、リズムとかは無視してもらっても構いませんが、上手くいけば自然とリズムが合ってきます。
この状態で肘を伸ばしてリカバリーしようとしたら、初めは出来ても、水の重さが勝ってきてすぐに疲れてしまします。
疲れるとちょっとでも疲れない方向に自然に体が動きます。
そこで一番文字通り手を抜けるポイントは、戻す動作の時。
少しでも水を持ち上げず、腕に負担が掛からないようにしようと水から肘を抜き出すようにリカバリーしようとします。
その時の肘の動きがクロールのリカバリー動作の時の肘を抜く動作にとても近いです。
平泳ぎのキックが苦手な方はクロールのキックでも構いませんが、必ず顔を出して泳ぐのがポイントです。
顔を出して泳ぐクロールはまさに日本泳法の抜き手そのものなのです。
4.日本人ってやっぱり賢い
ご年配の方がもう一つ教えて下さった事は「頭の上に衣服を乗せ、そして敵に気づかれないよう静かに川を渡らないといけない」という事でした。
抜き手は、日本泳法という名前ではあるものの、本来の目的は自分の命を守るための泳ぎだったという事を教わりました。
服が濡れると体温を奪われてしまうのでそれだけでダメージになってしまうし、傷んでしまうと先々の生活で不利になるのは分かり切ってる事なので、服が濡れないよう、また無くしたり傷めたりしないような工夫を予め施していたんだと、日本人の賢さにつくづく感心しました。
抜き手は、クロールのかきの最後の部分、いわゆるフィニッシュの部分をカットしている状態なので、このやり方はクロールでは使えないと言われる方もおられると思いますし、それももっともだと思います。
なのでこのやり方がクロールの肘から抜くという練習においてベストな方法とは申しませんが、何をやっても感覚が掴みにくいという方は一度試して頂いて、そのきっかけだけにでもなればと思いました。
しかし抜き手は、水泳がある程度上達した方でないと出来ない方法でもありますので、クロールの練習とは別の意味で試しにやってみても損は無いと思います。
加えて、個人的な意見ではありますが、抜き手という手段で命をつないできた日本人の「生きる知恵」を継承していくためにも、少し形や場面は違いますが、このような近代4泳法の練習の場面にも活用される事で日本泳法がずっと続いていって欲しいな、という思いもあり記載させて頂きました。
ぜひ試して頂ければと思います。